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工芸という言葉について

 工芸、という言葉がどうも曖昧に認識されているので少しまとめてみます。

 日本で工芸というと、やはり焼き物のイメージが強い様で、次に漆や染織、となる。金工木工は、その次あたり。
そして、工芸というと、『伝統工芸』という言葉が一緒になって思い出されます。

 この辺りが一般的な認識で、実はその中でもさらに曖昧に認識されている点があると考えます。

 工芸という言葉は、英語で書くと『craft』となる。『art』ではありません。西欧では、この違いははっきりしています。根本的に、工芸は『用』、つまり使える物かどうか。それに対して純粋芸術『fine art』がある。西欧では、純粋芸術の方が格式が高いとされています。

 日本の『伝統工芸』はどうでしょうか。
 まず、伝統工芸品はみんな日用品ではないの?と言われそうなのだけど、よくテレビで地方の地場産業として紹介されている伝統工芸品は、より具体的に書くと経済産業大臣指定伝統的工芸品の事である。上で書いた、伝統工芸と聞いて思い出されるのがこれです。詳しくはリンク先に書いてありますが、一定の条件を満たした産業について経済産業大臣が認定をしたものです。これに認定されていないものは、伝統的工芸品ではありません。(注、定義の問題であり同じ技法を使った工芸品や他の工芸品も沢山他にもある。)
 勘違いされやすいですが、なんとなく古めかしいもの、が伝統工芸ではありません。

 よく見ると、これは伝統『的』工芸品となっています。

 
 もう一つ、伝統工芸という言葉には側面があります。

 『美術的工芸品』というものです。
 これは、フェノロサの『美術真説』、岡倉天心の『日本美術史』で尾形光琳の作った物が美術史の流れから書かれた事、『稿本日本帝国美術略史』で美術的工芸という節が作られた事(先行するものからその傾向はあった)、また第四回内国勧業博覧会において美術工芸と確立された分野がある事から、明治十年代後半からあった言葉とされます。
 よって、美術品としての工芸品、という物がある事がわかります。

 美術的工芸品という言葉には、伝統という言葉はついていないのですが毎年秋に三越で開催される伝統工芸展は、まさにこの美術的工芸品の展覧会で、そんな事もあって伝統工芸という言葉が広く、曖昧に認識されているように思います。

 基本的に、美術的工芸品としての伝統工芸品も、『用の美』を追求しており、日用品として使う物が前提となってます。
 
 ここで、金工仲間の間でもしばし話題になるのが『置物』は工芸品か否か。

 例えば、明治の大御所、鈴木長吉のこの十二の鷹
 
 用の要素はありません。伝統工芸どころか、工芸品でもないのでしょうか?

 明治の彫金家、海野勝ミン(王偏に民)の弟弟子に師事された方に、美術工芸品は床の間に飾れるもの、と言われた事があります。定義論は答えが出し難いのですが、それが一つの定義であるなら工芸品になると思います。むしろ、最近の家には床の間がなかったりするのでそれでは逆に美術工芸品は作れなくなってしまうのですが。

 この辺の話を元に、次は鍛金という物について書いてみたいと思います。

 

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